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一般講演 G1-07

極被陰下に生育するニセアカシア萌芽枝の葉寿命

*真坂一彦(北海道林試), 山田健四(北海道林試)

一般に、被陰下に生育する個体の葉の寿命は、明るい場所に生育する個体の葉の寿命より長くなる傾向がある。この現象は、葉の炭素経済によってある程度説明できる。すなわち、葉は、それ自身の製造・維持コストを回収する必要があるため、生育環境が暗くなるほど葉の寿命が長くなるというものである。しかし、葉の寿命は、暗くなるに従い無制限に寿命が延びるのだろうか?

この疑問に答えるために、極被陰下に生育する根萌芽によって発生したニセアカシアの萌芽枝(以下、ラメットと呼ぶ)の葉寿命を調査した。調査は、北海道江別市にあるヨーロッパトウヒからなる鉄道防雪林内で行った。林内は、林冠がうっ閉しているため、ニセアカシアのラメット以外に下層植生はほとんどない。林内において49本のラメットを選び、2005年6月上旬から11月中旬まで、約1週間ごとに当年枝上の葉の葉位を特定して生存状況を記録した。また、8月初旬に各ラメットの直上と林外で光量子密度(PPFD)を測定し、ラメットの光環境を推定した。もっとも暗いところに生育していたラメット周囲の光環境はrPPFDが0.6%だった。葉寿命は、葉位ごとに相対PPFD(rPPFD)と比較した。

調査の結果、葉寿命とrPPFDのあいだには単純な負の相関関係は認められなかった。各ラメットの最大葉寿命は、rPPFDが約3〜4%までは単純に増加してピークに達し(155日)、その後、明るくなるに従って最大葉寿命は減少する傾向が認められた。後者の傾向は、従前の葉の炭素経済モデルによって説明されてきた傾向と同じと考えられる。前者の傾向は、暗所において、葉の維持コストがかさむ前に葉を切り捨てている様子を反映しているものと推察される。なお、同様な傾向は、各ラメットの最大小葉数とrPPFDの関係にも認められた。

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