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一般講演 G1-09

岩手山北東面における亜高山帯植生の分布と成立過程:火山噴火にともなう土石流の影響.

*山口健太(横国大・院・環境情報),杉田久志(森林総研・東北),土井宣夫(岩手県・総合防災室),大野啓一(横国大・院・環境情報)

火山噴火後に発達する植生は、噴火による植生破壊の程度や新たに形成された立地環境の影響をうける。さらに、斜面では火山灰の降灰後に土石流などの噴出物の二次的な移動が発生し、新たな植生破壊や立地環境の形成をもたらすため、植生発達に影響を及ぼしていると考えられる。

奥羽山脈・岩手山は1686年に噴火し、東面を中心に火山灰が降灰した。現在、東から北面の亜高山帯域では、東面から北面に向かって火山荒原→ミヤマハンノキ林→ダケカンバ林→オオシラビソ林またはコメツガ林へと、同一標高で林相が変化する。本研究では、このような植生分布の成立過程と噴出物の堆積状態との関係を明らかにし、噴出物の二次的移動が植生発達に及ぼす影響を検討した。

岩手山北東面の2つの標高帯(標高1300m、標高1080m)に調査プロットを設置し、林分構造の解析、林冠木の年輪解析、火山噴出物の堆積状態の調査を行った。

火山噴出物の堆積状態を調べた結果、東面ほど大規模な土石流堆積物がみられた。降灰量が多かった東面では大規模な土石流が発生し、植生が壊滅的に破壊された可能性がある。一方、北面寄りでは小規模な土石流堆積物しかみられなかった。降灰量が少なく大規模な土石流が及ばなかったため、植生が壊滅的な破壊を免れた可能性がある。

年輪解析の結果から、東面寄りにみられるミヤマハンノキ林・ダケカンバ林の定着年代は20〜160年前と若く、北面寄りにみられるオオシラビソ林やコメツガ林の定着は190〜302年前と古かった。東面寄りでは植生が壊滅的に破壊され、その後も堆積物の2次的な移動が続き、植物の定着が制限されたと考えられる。北面寄りでは土石流による破壊を免れた植生が残存したため、オオシラビソやコメツガが早い段階で定着可能であったと考えられる。

日本生態学会