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一般講演 G1-10
1998年にカナダ東部で発生した ice storm がアメリカブナとサトウカエデが優占した落葉広葉樹林の構造と更新に対する影響について調査した.とくに ice storm は森林の現存量をどれだけ減少させたのか,そしてice stormによって種組成や種多様性は変化したのかについて検討した.この ice stormは今までカナダで記録された ice storm の中で最大規模の被害をもたらした.ice stormの発生前の1997年に半径 6 mの円形プロットを森林全体に87箇所に設置し,2005年に再調査することで森林構造の変化を調べた.1997年にブナとカエデは胸高断面積合計値の78%を占めていた.胸高直径1 cm 以上の胸高断面積合計値は1997年では49.1 m2/haだったが,2005年には31.5 m2/haに減少していた.また個体密度も6350/haから3875/haに大きく減少していた.2005年でもブナとカエデは胸高断面積合計値の74%を占め,依然として2種が優占していた.1997年と2005年の各プロットでのそれぞれの種の相対優占度を用いて DCA 解析を行った結果,上層木,下層木ともに,この8年間に種組成はほとんど変化していないことが分かった.ice storm後に新たな新規加入個体(DBH > 1 cm)は少なく,すでに存在していた稚樹の成長を促進するのみであった.以上の結果から,1998年の ice storm はブナ・カエデ優占林の現存量を大きく減少させたが,種組成や種多様性にはほとんど影響していないと結論された.