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一般講演 G3-01

孤立したミズナラ巨木樹幹に飛来する甲虫相 −周辺カラマツ林との比較ー

大澤正嗣(山梨県森林総合研究所)

孤立して残存する老齢木がしばしば人工林内に見られるが、これらが人工林の生物多様性に与える影響を明らかにするため、カラマツ人工林内に単木、あるいは小集団で残存しているミズナラ老齢木とカラマツ人工林の甲虫多様性の違いを調査している。熱帯林等において、樹冠における多様性調査が行われ、その重要性が明らかになりつつある。冷温帯においても樹冠における調査が必要と考えられるが、日本においては、高所における甲虫多様性の調査がほとんどされていないのが現状である。そこで、今回、ミズナラ老齢木およびカラマツ林で捕獲される甲虫の違いを高さに着目し調査・解析した。

中部山岳地帯奥秩父山塊南西部(山梨県北杜市須玉町木賊峠周辺)にて、カラマツ人工林内に単木、または小集団で孤立するミズナラ老齢木7本を調査木に選定した。また、そのミズナラ老齢木のある、あるいはその周辺のカラマツ人工林7箇所を調査地とした。それぞれのミズナラ調査木及びカラマツ林調査箇所に、高所2器、低所2器、計4器の吊り下げ式マレーズトラップを設置し、5月中旬〜9月中旬まで甲虫類の捕獲を行った。

その結果、高所より低所のトラップで、またカラマツよりミズナラ老齢木で多くの甲虫が捕獲された。高所または低所に偏って捕獲される甲虫も複数種認められた。低所では、ミズナラまたはカラマツに生息する甲虫類の他、林床を生息場所としていると思われる甲虫等も捕獲され、このことが低所の甲虫捕獲数を高めている原因と考えられた。今回の冷温帯におけるカラマツ林やミズナラ単木において、低所と比較し種数は少ないが、高所に偏って捕獲される甲虫が存在し、高所における調査は、森林におけるより全体的な甲虫多様性の把握に寄与することが示唆された。

日本生態学会