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一般講演 G3-05

親木による密度依存効果が植物の多種共存に与える効果

*岩田繁英(静岡大学),竹内康博(静岡大学),今隆助(九州大学)

植物の多様性は高いことが知られている。この植物の多様性の維持機構は何なのか古くから研究が行われてきた。植物は固着性であるが同一植物種、他植物種と直接的または間接的に相互作用を及ぼしあい生活しているが植物の多様性の維持機構は複雑かつ難解だ。その中で密度依存効果が多種の共存機構の維持機構として提唱されてきた.そこで本研究では、密度依存効果のかかり方と多種の共存の促進機構の関係に注目する。

植物の生活史は3つの段階に分けることができる.1)種子、2)実生、3)成体。ここではこのステージを一般化し次のように定義する。1)成体から作られた個体、2)種子が定着し発芽した状態(成体への移行段階)、3)種子を繁殖することが可能で実生から成長した個体。種子から実生、実生から成体、成体から種子という一連のサイクルが見られる。温帯、熱帯雨林地域では親植物とその種子の距離が近ければ近いほど種子の死亡率は低く、逆なら高いということが知られている。この事を一般化すれば、親の密度が高ければ種子の死亡率は高くなるということになる。一方で、成体から種子を生成する際には同一植物が多くなり、共通の栄養塩を競争する個体が増加する.その結果、成体の種子生成能力は減少すると予想される。つまり、成体の密度が高ければ種子の生成は制限されることになる。

本研究では、我々はA)ステージから実生への成長段階において密度依存効果がかかる場合と、B)が種子を生産することで繁殖する段階にかかる密度依存効果の違いを比較する。本研究では数理モデルを用い植物の個体群動態を示し、前述の二つのタイプの密度効果を加えることでこれらが植物の多種共存に与える影響の違いについて得られた。結果として、Aタイプの密度依存効果よりもBタイプの密度依存効果の方が多種共存を促進する結果となった.

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