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一般講演 G3-06

落葉広葉樹実生の成長と生存のトレードオフ関係

清和研二(東北大学 院 農)

【モデル】 森林には様々なサイズのギャップが形成され、光や水分などの資源量は不均一に分布している。このようなヘテロな環境下では、構成種の間で、生存と成長の間にトレードオフ関係が見られる場合、それらの種群は共存できる(Chesson 2000)。もし、光の豊富なギャップで成長率が高い種が暗い林内でも生存率が高ければ、森林内のどこでもその種が優占し寡占状態となる。多くの種が共存するには、ギャップで成長率が高い種は林内ではむしろ生存率が低く、また林内で生存し続けるような種は逆にギャップでの成長率は低いというトレードオフの成立が必要である。そうであれば、これらの複数の種はそれぞれのハビタットでの更新確率は同じとなり共存できる.

【検証】 落葉広葉樹林の大ギャップ・小ギャップ・林冠下の3カ所で発芽した広葉樹5種の実生を対象に、生存と成長のトレードオフ関係を検証した。ミズナラやイタヤカエデは林冠下での生存率は高いがギャップでの生長率は低い。一方、シラカンバやケヤマハンノキはギャップでは勢い良く成長するが林冠下での生存率は極めて低い。したがって、一つの森林内にギャップが混在するような環境ではこのような複数種が共存できることになる。また、このトレードオフ関係は小ギャップより大ギャップの方がより明確であった。これは一つの森林内で光環境のバラツキがより大きいほど多くの種が確実に共存できる事を示している(Seiwa 2007)。

このようなトレードオフ関係が種多様性を導くという研究例は近年熱帯林では増加しつつあるが(Wright et al. 2003; Baraloto et al. 2005; Gilbert et al. 2006)、温帯林での検証例はほとんどない。単純だが注目すべきモデルだと考えられる。

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