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一般講演 G3-11

DNAソースとしての糞の評価及び種・性判定法の開発ーロシア極東に生息するネコ科動物の糞を用いて

*杉本太郎(北大・環境科学),永田純子(森林総研),Vladimir Aramilev(ISUNR),Alexander Belozor(ISUNR),東正剛(北大・環境科学),Dale R. McCullough(California Univ.)

近年の分子生物学的手法の発達とともに、糞や毛など非侵略的に採取できる試料が有効なDNAソースとして用いられるようになってきた。糞から抽出されるDNAは、表面に付着する腸の上皮細胞に由来している。糞をDNA試料として用いることは、生物体に直接触れることなく、絶滅危惧種や捕らえにくい種のDNAを容易に獲得できるという優れた点がある。しかし、野外に放置されている時間が長いほど、紫外線や降雨の影響によりDNAは断片化し抽出量も減少する。また肉食動物の場合、抽出したDNAにその個体が捕食した餌種のDNAが混在するため、分析に困難を要するという欠点がある。更に糞採集地域において、似たような形状の糞をする別の種がいる場合、糞の形態から種を同定することが難しい。

糞を用いることに長短はあるものの、対象動物を捕獲することなく、また一切のストレスを与えずにDNAを獲得することができるという点で、極めて有用な試料であるといえる。糞をDNA試料として用いる上で重要な点は、効果的なDNA抽出方法を用いることである。近年の糞を用いた研究例から、対象動物の食性や糞の形状などにより最適な抽出方法は異なるようである。つまり、対象動物に適した方法を選択することが重要である。本講演では、ロシア極東に生息する大型ネコ科動物、アムールヒョウ・シベリアトラの糞を用いて、数種類のDNA抽出方法を比較した結果と、糞の種・性判定方法の開発について述べる。

日本生態学会