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一般講演 H1-01
森林において倒木や地滑りなどが生じると, 林冠にある程度の大きさの隙間「森林ギャップ」が生じる. ギャップは, 樹木を定着させることにより樹種多様性の増大に寄与することが知られており, 植物群集の高い生産性や多様性を支え, 多くの熱帯林において生態的・進化的に不可欠な役割を果たしていると考えられる. しかし, ギャップの効果については, 植物単独の観点からは研究されているものの, 植物と相互作用する動物の空間的時間的分布に与える影響についてはほとんど知られていない. 群集全体の多様性について説明するためには, 相互作用する生物についての調査が不可欠であろう. そこで, 本研究では, 生物体量が多く植物や半翅目昆虫をはじめとする様々な生物と多岐に関係し, 群集構造に大きな影響を与える生物として知られているアリ類に注目し, アリ-半翅目昆虫‐植物相互作用系を対象として調査を行った.
非季節性熱帯雨林が広がるマレーシア, サラワク州のランビルヒルズ国立公園の原生林内において, ギャップ及び林床に方形区を設置し, 調査区内の植物について, アリの花外蜜利用の有無および植物上の半翅目昆虫への随伴の有無などを調べた. その結果, アリと花外蜜植物の関係やアリと半翅目昆虫の関係はどちらもギャップにおいて多く見られ, それは, 光の量やそれに伴う新葉の増加によってもたらされている可能性が示唆された.
また, 同定結果の解析から, 種ごとの対応や特異性, 種の特性についても考察した. 種構成の詳細な解析をしていくことで, ギャップが多様性に与える影響を解明できるだけでなく, 三者間の相互作用網が浮き彫りになるだろう. これらの関係を明らかにすることは, 熱帯の生物多様性を理解する上で重要である.