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一般講演 H1-04

地球温暖化が北方森林生態系に与える影響:電熱線を用いた野外操作実験

*中村誠宏,日浦勉(北大・苫小牧)

二酸化炭素などの温室効果ガス濃度の上昇により、今世紀中に地球全体で2-6℃の急激な地球温暖化が生じることが予測されている。その上昇幅は高緯度になるほど大きいと考えられ、北方森林生態系は大きな打撃を受ける可能性が高い。本研究の目的は、この地球温暖化に対する北方森林生態系の応答を見るため、樹木の地下部と地上部を暖める人工的な温暖化現象を野外で作り出し、最終的には森林生態系の生物多様性、食物網、物質循環などへの影響を明らかにすることである。

そこで、予備研究として北海道大学苫小牧研究林の樹冠クレーンのあるサイトにおいて、ミズナラ個体(高さ:15-20m)を中心に5m x 5mのプロットを作り、電熱線を用いて、1)地下部温暖化、2)地上部温暖化、3)対象の3つの処理区を1つずつ設置した。なお、温暖化処理は、100年後の気温を想定して、周りに比べ5℃前後の温度差を電熱線の発熱により作りだした。

その結果、1)地上部温暖化はミズナラ樹木の開葉フェノロジーを一週間ほど早め、2)咀嚼性昆虫からの葉の食害度を増大させた。また、3)吸汁性及び潜葉性昆虫の密度も増加した。一方、4)地下部温暖化も開葉フェノロジーを3日ほど早め、5)夏において枝の二次伸長を促進させることが確認された。しかし、6)食害度及び植食性昆虫の密度への影響は見られなかった。

本研究により、地上部と地下部の温暖化処理によって植物成長そして植食性昆虫への影響が異なることが示唆された。

日本生態学会