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一般講演 H1-09

肉食性水生昆虫の野菜生活 2.共存

*加藤元海,宮坂仁(愛媛大・沿岸センター)

大型のカワゲラ幼虫であるオオヤマカワゲラ、オオクラカケカワゲラ、カミムラカワゲラは、多くの山間渓流で共存している。これら3種は肉食性といわれているが、胃内容物に付着藻類が見られることもしばしばある。本研究では、これら水生昆虫の生息環境(水深・流速)、生理学的な活性(呼吸量)、そして餌資源(窒素安定同位対比)に着目して、カワゲラ幼生3種の共存機構を調べた。オオヤマは、夏には流速の速いところを、冬には流れの緩やかなところを好む傾向にあった。オオクラカケは他の2種に比べ、流速の速いところを年間を通して好む傾向があった。オオヤマとオオクラカケの生理学的活性は、冬と比べて夏に有意に高い値が得られた。また餌資源解析では、オオヤマとオオクラカケは、夏には肉食性で冬には雑食性を示した。一方でカミムラは、生息場所における流速と生理学的活性においては季節的な変動はみられず、餌資源は年間を通して雑食性であった。以上の結果から、肉食性カワゲラ3種の共存に関して、以下のような棲み分けのヒントが示唆された。最も優占した種であるオオヤマは、生息場所、生理学的な活性、そして餌資源が季節的に変化する。オオクラカケは流速の速いところをニッチとしている。カミムラは季節的な変化は特にみられず、オオヤマとオオクラカケとの間の競争よりもニッチが離れているのかもしれない。

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