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一般講演 H3-07

オオタカ個体群の遺伝構造

*高木義栄(森林総研・北海道),河原孝行(森林総研・北海道),北村尚士(EFP),遠藤孝一(オオタカ保護基金),工藤琢磨(森林総研・北海道)

遺伝的多様性の減少による個体群の生存力低下や個体群間の遺伝的交流を考慮すると、遺伝的多様性や遺伝構造に関する情報は個体群の保全において重要である。我々は日本産オオタカの血液サンプルから11個のマイクロサテライトマーカーを新たに作成した。これらと既存のマーカーを用いて日本個体群(石狩、十勝、栃木)と中央アジア個体群(ロシア、ウクライナ、カザフスタン)について遺伝的多様性・分化の程度を推定、遺伝構造を調べた。その上で遺伝的観点からの日本産オオタカの保全上の留意点を提示する。

どの個体群も十分な多様性を保持しており(Hs = 0.59,AR = 4.01)、遺伝的分化の程度は小さく(Gst = 0.038,Fst = 0.041)、遺伝構造は個体群間で似通っていた。遺伝的分化が小さい要因として段階的な遺伝子流動(0.5〜11.5/世代)が頻繁に生じていることが示唆されたが、分岐後の経過時間が短いことや日本個体群への輸入オオタカ流入の影響による可能性も残された。

今回の結果から、少なくとも東日本のオオタカは遺伝的にリンクしたメタ個体群から成る1つの個体群とみなせることが示唆される。また、調査個体群は遺伝的に深刻な状況下にはないが現在の多様性レベルを維持することが重要である。さらに、今後の更なる輸入オオタカの日本個体群への流入を防ぐ対策が早急に望まれる。

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