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一般講演 H3-09
野外における植食性昆虫の寄主利用は,親(成虫)が最も高い適応度を獲得できるように選ぶことを通じて実現される.親の適応度は親自身の生存・産卵成功と子の生存や発育という2要素の積で表現できる.寄主植物選択に関する研究の多くは,親は子の生存や発育に最も好適な寄主を選択するという視点から行われてきた。しかし実際には,最適な植物を選んでいない事例も多く見られる(Mayhew, 2001).そこで本研究ではヤナギルリハムシを用い,子の生存や発育だけでなく親自身の生存や産卵成功にも注目して寄主利用を説明した.
まず3年間9世代にわたる個体群データをもとに,寄主利用が決定される発育ステージを変動主要因分析により特定した.その結果,寄主利用は成虫期に決まり,特に成虫の移動分散が重要であることが判明した.一方,幼虫期の寄与は小さかった.実際,幼虫パフォーマンスで評価した餌の質はヤナギ種間で大きく異なったが,寄主利用の決定要因ではなかった.その理由としては,野外では天敵によって餌の質の違いが相殺されることが示唆された.
次に,親の生存や産卵成功を左右する親自身の採餌に注目した.本種の場合,葉の硬さの制約から成虫は柔らかい新葉しか摂食することができない.野外における産卵パフォーマンスは新葉量に強く規定されていた.そこで誘引効果のない衝突板トラップを用いて,各寄主株に飛来する成虫数を調べることにより,新葉量と寄主利用の関係を調べた.その結果,成虫は生息場所における新葉量を的確に評価し,その量によって寄主を決定することが判明した.
以上より,本種の寄主利用においては,成虫の採餌を通した産卵成功が重要な要素であるといえた.