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一般講演 P1-004
高緯度域に見られるイシサンゴ群集の多くは低緯度域より流れてくる暖流の蛇行の影響を受け、変化しやすい水温環境下に生息している。熊本県天草(32度N)とオーストラリアthe solitary islands(29-30度S)において行われた過去の調査では、低海水温の影響と思われる放卵放精の分裂(個体群内の放卵放精が異なる時期に部分的に起こる)や同調性の低下が報告されており、幼生供給の低下や不安定化につながると推測されている。また、これらの現象の発生や度合いは種間で異なっており、高緯度域における各イシサンゴ種の分布・動態にどのような影響を与えているのか興味深い。今回の発表では過去に行われたこれら2つの調査と高知県大月町黒潮生物研究所地先(32度N)において2006年度に行われた本調査とを比較し、高緯度に生息するサンゴ群集の放卵放精パターンについて議論する。
本調査:2006年7−8月にかけて研究所地先に優占しているイシサンゴ6種(Acropora cf. hyacinthus, A. japonica, Echinophyllia aspera, Favites pentagona, Platygyra contorta, Plesiastrea versipora)について放卵放精パターン(タイミング・群体間の同調性)を調査し、P. versiporaを除いた5種において放卵放精が観察された。ミドリイシ科2種(A. cf. hyacinthus, A. japonica)では群体間において放卵放精の高い同調性が観察されたのに対し、他3種では同調性が低かった。これは7月に記録された23℃前後という低い水温に因るのではないかと推測される。また、卵を持っていたにもかかわらず、P. versiporaの放卵放精は確認することはできなかった。