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一般講演 P1-005
配偶相手である雌や雌雄同体よりも著しく小さな雄を矮雄(わいゆう)と呼び,チョウチンアンコウ類や一部のクモ類,フジツボ類などで知られている。フジツボ類やクモ類などで矮雄間の競争についての先行研究は多少あるが,詳細な知見はなく,なぜ雄が矮化したのかという疑問は未だ解明されていない。そこで,本研究ではフジツボ類の一種で雌に多数の矮雄が着生しているミョウガガイScalpellum stearnsiiについて,矮雄の数や大きさと雌の大きさや抱卵量,矮雄の着生位置との関係を解析した。
雌1個体に着生している矮雄数は平均6個体で,雌の大きさとは有意な正の相関があったが,雌の卵塊の重さとは有意な相関がなかった。また,雌の体表上において,産卵口に近い部位に多くの矮雄が定着していた。矮雄が着生してから雌は産卵するので,矮雄は必ずしも卵塊の大きな雌を選択できないが,繁殖に有利であると考えられる大きな雌や産卵口に近い部位を選んで着生している可能性が示唆された。
さらに,矮雄の大きさと雌の大きさとは有意な負の相関があったが,卵塊の重さとは有意な相関がなかった。また,矮雄の大きさと産卵口までの距離とは有意な相関がなかった。これらより,大きな矮雄が繁殖に有利であるとは言えなかった。これらの要因が雄の矮化に関連していると思われる。
今後,遺伝子マーカーを用いた矮雄の授精成功について詳細に解析する。