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一般講演 P1-010

雄への投資が卵を大きくする

*大秦正揚,岸茂樹(京大院・農・昆虫生態)

雄に性選択が働くとき雄の体が大きいほどその個体の繁殖成功度が増加することが多い。このような生物における雄の繁殖成功度は交尾する雌の大きさや数に比例して増加する。一方、雌の繁殖成功度は体の大きさに比例した自身の卵の数で決まる。それ故、多くの雌と交尾できる大きい雄の繁殖成功度は、大きい雌のそれよりも高くなると考えられる。こうした場合、親は、より大きい雄の子が得られるような戦略を採るほうが有利である。

エゾスジグロシロチョウは、多回交尾で、雄のほうが雌よりも大きいが、雌雄の大きさの差は個体群によって異なる。

そこで、このチョウを用いて、雄が雌よりも大きい個体群の親は、より大きい雄の子を得るための投資戦略を採っていることを、雄と雌の大きさに差がない個体群との比較から探った。投資量の指標として卵の大きさに着目し、個体群の卵の大きさの平均値および卵の大きさと蛹の重さの関係の雌雄差を比較した。また、交尾時の雄の大きさの影響の違いを知るために、交尾した雌雄の大きさのパターンを個体群間で比べた。

その結果、雄が雌よりも大きい個体群では、卵が大きく、雄の蛹は卵が大きいほど重くなり、その程度は雌よりも大きかった。また、大きい雄ほど大きい雌と交尾できていた。一方、雄と雌の大きさに差がない個体群では、比較的卵が小さく、雄の蛹は卵が大きくても重くならず、その程度は雌と変わらなかった。また、交尾した雌の大きさは、雄の大きさと関係がなかった。

以上から、雄が雌よりも大きい個体群では、大きい雌と交尾できる大きい雄になる上で卵の大きさが影響しており、この個体群で卵の大きさの平均値が比較的大きい理由は、繁殖成功度の高い大きい雄を得るための子への投資戦略の結果であると考えられた。

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