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一般講演 P1-011

三重県櫛田川水系産のシロヒレタビラAcheilognathus tabira tabira の産卵母貝種選択とその要因

*前田玄(大阪教育大・院・教育),北村淳一(京大・理),川畑綾子,長田芳和(大阪教育大・教員養成)

コイ科の一種であるシロヒレタビラは,生息地によって産卵する二枚貝種が異なることが知られている.本調査地である三重県櫛田川水系ではイシガイ科二枚貝類7種が生息しているが,オバエボシに産卵する頻度が高いと報告されている(Kitamura.2006).しかしタナゴ類は様々な環境要因によって産卵する二枚貝種を選択している(Smith.2002;Kitamura.2006)ので,天然水域での報告だけでは櫛田川水系のシロヒレタビラがオバエボシを選択する要因を特定できない.

そこで本研究では,様々な環境要因を取り除いた条件下で水槽実験を行い,櫛田川水系産のシロヒレタビラがどの二枚貝種に産卵するのか、またその選択に貝の反応が関わっているのかを明らかにすることを目的とした.

実験区域に,シロヒレタビラの雌雄,オバエボシ,カタハガイを1個体ずつ実験区域に設置した.魚が貝に興味を示し出したところで,経過時間を計り始め,雌雄の行動・貝の水管の開閉を観察し記録した.雌が産卵を行えば,産卵時間,選択した貝種を記録した.

実験全21例中産卵が行われたのは10例で,その内9例はオバエボシ,1例はカタハガイに産卵したことから,櫛田川水系産のシロヒレタビラがオバエボシへ強い選択性を持っていることが明らかになった.さらに,シロヒレタビラが貝の水管開時に行った,貝の水管を覗き込むInspectionと貝の水管に産卵管の基部を接触させるSkimmingの二つの繁殖前行動に対して貝は水管を閉じ,その頻度はInspectionでカタハガイのほうがオバエボシよりも高かった.このことより,シロヒレタビラの産卵母貝種選択において,産卵前行動に対する二枚貝類の反応が選択の要因の一つとなっていることが推測される.

日本生態学会