| 要旨トップ | ESJ54 一般講演一覧 | 日本生態学会全国大会 ESJ54 講演要旨


一般講演 P1-014

沖縄島におけるオキナワコキクガシラコウモリのエコーロケーションコールの地域変異と遺伝的分化

*吉野 元(東北大・生命科学),Kyle Armstrong(京大・博),伊澤雅子(琉球大・理),横山潤,河田雅圭(東北大・生命科学)

キクガシラコウモリ類は長時間一定の周波数(CF)を含むエコーロケーションコールを発する。CFは、種間、同種内の個体や性、集団間で変異が見られ、CFの機能としては、餌や配偶者の認知にも重要であることが指摘されている。同種内の集団間でのCFに関する顕著な変異は、生態的及び形態学的、さらには遺伝的分化を引き起こす可能性が指摘されており、キクガシラコウモリ類の多様化を理解するための重要な現象である。しかし、このような集団間の大幅な周波数変異がどのような要因によって生じ、現在まで維持されているかは未解決の問題であった。

沖縄島に生息するオキナワコキクガシラコウモリに関して、北部と中南部の地域集団間でCFの周波数帯域が6-8kHzも異なる。本研究では、集団遺伝学的解析を行うことで、沖縄島の本種に見られる周波数変異がどのような要因で維持されているのかを明らかにすることを目的とした。

マイクロサテライト領域の解析の結果、地域集団間では遺伝子流動があるにもかかわらず、変異は維持されていることがわかった。一方で、mtDNAのD-Loop領域の解析では、集団間で遺伝的に分化していることが推定された。この2つの分子マーカーで見られた結果の違いは、沖縄島の本種の地域集団間で、雌のphylopatyと雄による遺伝子流動が生じている可能性を示唆している。

以上のことから本発表では、周波数変異の維持機構として、雌の隔離の重要性を指摘するとともに、CF部の周波数に対する、遺伝子流動を妨げるほど強い何らかの選択圧が働いている可能性も議論した。

日本生態学会