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一般講演 P1-024

チャイロキツネザル種間雑種個体群のマイクロサテライトDNA分析

*田中美希子,田中洋之,平井啓久(京大・霊長研)

マダガスカル南部のベレンティ保護区では,1970年代と1980年代に染色体数の異なるチャイロキツネザル2種(Eulemur fulvus rufus: 2n=60 と Eulemur collaris: 2n=52)が少数個体で導入され,個体群が急速に成長してきた.前回大会では,このチャイロキツネザル個体群の核型(染色体の数と形態)を分析し,雑種第一代(F1)よりも交配がすすんでいること,世代の多重構造,雄雌の生活史の違いについて報告した. 本研究では,この種間雑種個体群におけるマイクロサテライトDNA多型を調べ,個体群の遺伝構造を把握することを目的とした. ベレンティの雑種 81個体,純粋な E. fulvus rufus 11個体および E. collaris 7個体から試料を採取した.チャイロキツネザルおよびマングースキツネザルで開発されたマイクロサテライトDNA 19遺伝子座の分析をし,そのうち本個体群での利用に適した10遺伝子座を分析対象とした.各遺伝子座の対立遺伝子数はベレンティ個体群において 4 - 13,純粋な 2種をあわせると 5 - 16 であった.それらの中には純粋な 2種を区別する対立遺伝子も見いだされた.ベレンティ個体群では,それぞれの種に由来すると考えられる対立遺伝子が個体により異なる比率で観察され,雑種第一世代の後,両種への戻し交配が起こっていたことがわかった.ベレンティ個体群でのヘテロ接合率は 0.30 - 0.90 であった.他のキツネザルの自然生息地の個体群との比較から,ベレンティ個体群は,少数個体が創始者となった集団であり,他個体群からの遺伝子の流入がないにもかかわらず,遺伝的多様性が同程度に保たれていることが示された.

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