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一般講演 P1-027

フトエダミドリイシ集団の遺伝的構造

*磯村尚子(琉球大・理工・21世紀COE),日高道雄(琉球大・理・海洋自然)

造礁サンゴであるAcropora (Isopora) brueggemanni(フトエダミドリイシ)は、プラヌラ保育型であるが、群体から折れた枝が定着し、新しい群体を形成する破片化(fragmentation)を行なう。また、著者らの先行研究から、フトエダミドリイシは一部のプラヌラを自家受精で生産していること、不定期にごく少数のプラヌラを放出することが明らかになっている。

本研究では、フトエダミドリイシの繁殖様式が集団の遺伝的構造にどのような影響を及ぼすかを明らかにするため、沖縄県慶良間諸島3地点、宮古島3地点、石垣島3地点および石西礁湖10地点のフトエダミドリイシを対象として、同属他種で開発されたマイクロサテライトマーカーを用いた集団遺伝学的解析を行なった。

各集団について8-30群体を解析したところ、genotype数は1.2から25と大きく異なっていた。ほとんどの集団でHardy-Weinberg平衡は不成立であった。集団のクローン構造を示すSimpson’s diversity indexは0.19から1であった。また、集団の遺伝的分化を示すRSTは0.15であり、Neiの遺伝的距離の値を用いた主座標分析からは、地域ごとのまとまりがみとめられたものの、集団間で大きくばらついていることが示された。

これらの結果から、各地域集団のクローン構造や遺伝的多様性は集団間で大きく異なっていることが明らかになった。さらに、集団間で遺伝的分化が大きいことが示された。これは、プラヌラ幼生によって一旦新規加入した後は、他集団との遺伝的な交流はあまり行なわれず、さまざまな繁殖様式を用いてその集団の維持・更新を行なっているためと考えられる。

日本生態学会