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一般講演 P1-044

諏訪湖のオオクチバスとブルーギルの分布

*川之辺素一(長野県水産試験場諏訪支場),箱山洋(中央水産研究所)

オオクチバスやブルーギルなどの外来魚(捕食者)はフナ類など在来魚(被捕食者)に対する脅威であるが、その生息地利用や移動を考慮して対策をはかる必要がある。湖の多くの在来淡水魚が生活史の異なる段階において湖-河川-水田水路といった異なる環境を利用するが、外来魚の生息地利用はよくわかっておらず、外来魚の侵入状況によっては捕食の影響が決定的な生息地・時期が生じている可能性がある。ここでは諏訪湖および流入河川における外来魚(オオクチバス・ブルーギル)の季節変化に伴う分布の実態を把握するため、(1)5-6月の産卵期において、漁港内で釣りによる産卵親魚の捕獲およびタモ網による卵やふ化仔魚の捕獲を行い、湖岸25カ所の漁港別の分布状況を調査した。結果、漁港によって外来魚の利用状況が違うことが確認された。さらにオオクチバスの親魚は8月以降の調査で捕獲数が減少したため、漁港内は産卵期を中心に利用されていると考えられた。(2) フナ類の繁殖場である諏訪湖南東部に位置する6つの流入河川において網漁具を中心とした外来魚の捕獲を試みた。フナの繁殖期は3-6月であるが、6-9月にはオオクチバス・ブルーギルともに捕獲が少なく、10月以降増加した河川があったことから、外来魚が諏訪湖から流入河川へ移動したと考えられる。調査河川の一つである新川では例外的に農業用取水堰堤の上流でオオクチバスのふ化仔魚が捕獲され、再生産が行われていると考えられた。以上の結果から、諏訪湖においては産卵期のオオクチバス・ブルーギルのフナ産卵場(流入河川)への侵入の程度は小さく、在来魚への捕食圧が大きいのは湖内であると考えられる。この研究は環境省地球環境保全等試験研究費「在来淡水魚保全の為の生息地ネットワーク形成技術に関する研究」平成18-20年度において行った。

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