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一般講演 P1-045
近年の里山林の減少によってチョウ類の生息地の分断が生じ、遺伝子流動が妨げられている可能性がある。本研究では、大阪府の里山林で多く見られるクロヒカゲLethe dianaとミズイロオナガシジミAntigius attiliaの2種を対象にそれらの遺伝的多様性を調査した。クロヒカゲは多化性で幼虫は寄主植物としてササ類を利用し、ミズイロオナガシジミは年1化性で、コナラ、クヌギなどのブナ科植物を利用する。2005年から2006年に大阪府北部能勢町の5ヶ所の里山林においてクロヒカゲ115個体、ミズイロオナガシジミ59個体を採集し、クロヒカゲについては、ミトコンドリアDNA COI領域(439bp)の塩基配列を、ミズイロオナガシジミについては、ND5領域(832bp)の塩基配列をそれぞれ決定した。その結果、クロヒカゲは21種類、ミズイロオナガシジミは9種類のハプロタイプが確認され、どちらの種においても複数の地域で共通するハプロタイプが多数見られた。クロヒカゲのCOI領域では34、44、296番目など20ヶ所の塩基に変異が見られた。ミズイロオナガシジミのND5領域では256、334、358番目など12ヶ所の塩基に変異が見られた。本種は、比較的狭い範囲に里山林の散在する大阪府北部地域において、高い遺伝的多様性を保持していることが明らかになった。得られた結果と大阪府内の他の生息地で採集された個体の解析結果から、調査地域における本種の遺伝子交流について考察する。