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一般講演 P1-046

樹齢1000年の森林資源循環型エコシステムマネジメントの構築−伊勢神宮 式年遷宮用材保続生産に向けて−

*中島徹,白石則彦 (東京大学)

伊勢神宮を20年ごとに新造する“式年遷宮”は,千数百年の歴史をもつ日本の代表的な伝統行事である。式年遷宮にはこれまで木曽ひのき等の天然木が使用されていたが,次回2013年に予定されている遷宮には使用する木材(御造営用材)の一部を神宮自らが所有する宮域林から自給することとなった。この巨樹巨木からなる御造営用材を安定供給するためには,植生遷移において極相に達した樹齢1000年の原生林再生と,森林資源の持続的な利用を両立させたエコシステムマネジメント(生態系管理)を実現することが求められる。本研究はこの伊勢神宮宮域林を対象に,持続可能な資源循環型の生態系管理を具体化することを目的とした。まず,伊勢神宮の目標である御造営用材の安定供給を,森林資源利用計画(Plan),原生林再生のためのリスクマネジメント(Do),森林資源モニタリングシステム(Check),システム分析に基づく計画の改善(Action)からなるPDCAサイクルとして構造化した。そのうえで,本報告では特に森林資源利用計画(Plan)についてより重点的な解析を行った。具体的には林木の種内競争に応じた成長シミュレーション,森林の区画ごとの全体データベースである森林簿,電子化した林相図等をコンピューター上で結合し,GIS (地理情報システム)として一元化した。この地理情報システムを基礎に,将来の森林の成長を予測し,動的計画法(Dynamic Programming:DP)によって式年遷宮への森林資源利用計画を最適化した。その結果,宮域林では将来樹齢1000年以上の保護林を設けることを視野に入れながら,今後100年にかけて比較的小規模な伐採を繰り返すことで,持続的な資源循環に支障なく御造営用材の自給率を98%まで高め得ることがわかった。

Keywords:生態系管理;森林資源;伊勢神宮;地理情報システム;DP

日本生態学会