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一般講演 P1-052

房総半島における大型哺乳類による農業被害とランドスケープ構造の関係性

*高田まゆら(東大院・農), 鈴木 牧(東大・演習林), 落合啓二, 浅田正彦(千葉県博), 宮下 直(東大院・農)

近年、日本各地で大型哺乳類が増加し、それらが引き起こす農業被害が深刻化している。こうした被害の程度は、大型哺乳類の生息密度だけでなく森林から農地へのアクセスのしやすさや農地周辺の餌環境などのランドスケープ構造により影響を受けている可能性がある。本研究では千葉県房総半島において、シカが引き起こす水稲被害の程度が、シカの生息密度に加え水田周辺のランドスケープ構造によりどのように変化するかを明らかにした。シカ分布域内の約500軒の水田農家を訪問し、シカによる水稲被害の程度と水田の位置を尋ねた。本研究で注目するランドスケープ要素である水田周辺の森林の面積及び林縁長の効果を検証するため、GIS上で対象水田を中心に半径0.2kmから0.7kmまで0.1km間隔でバッファを発生させ、各バッファにおいてそれぞれのランドスケープ要素の割合を計算した。目的変数をシカ被害の程度、独立変数を対象水田周辺の推定シカ密度、各バッファ内の水田周辺の森林の面積割合、林縁長の割合、水田の緯度、経度とし、二項分布を仮定した一般化線形モデルによる解析を行った。

Akaike weightsを基準としたモデル選択の結果、シカによる被害は、シカ密度に加え水田周辺0.5km内の森林の割合が高いほど多く、また林縁長の割合が高いほど低くなることが明らかになった。こうした結果から、シカによる水稲被害を軽減するためには、森林と水田が混在するランドスケープで特に強い駆除圧をかける必要があると考えられた。また今後シカの分布が拡大すると予想される地域では、こうしたランドスケープを持つ水田でより早く被害対策を講じる必要があると思われる。

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