| 要旨トップ | ESJ54 一般講演一覧 | | 日本生態学会全国大会 ESJ54 講演要旨 |
一般講演 P1-059
カルタヘナ議定書に対応した国内法の施行に伴い,現在使用されている遺伝子組換え生物が一般環境中に存在しているのか,存在している場合にはどのような状況でどの程度存在しているのかに関してのデータ収集を継続的に行っていくことが求められている。国内の港湾部やそこに至る幹線道路沿いの一部では,既に遺伝子組換えセイヨウアブラナの逸出が確認されており,これらは輸入された種子が輸送中にこぼれ落ちて発芽したものと考えられている。国内では多くのアブラナ属作物が栽培されている上に,カラシナ(B. juncea)の群落が各地に見られることから,交雑によって導入形質が近縁アブラナ類に移行する危険性が指摘されている。
本研究では国内で使用されている遺伝子組換え生物のうち,一般環境中での生育が確認されているセイヨウアブラナについて,2004年度から千葉県の国道51号線沿いを中心に逸出状況を継続調査している。2005年度の調査では,生育が確認されたセイヨウアブラナ1154個体のうち,グリホサート耐性26個体,グルホシネート耐性9個体の計35個体の組換え体が確認されていた。しかし2006年度の調査では,生育が確認された1345個体のセイヨウアブラナのうち,グリホサート耐性の8個体のみが確認され,グルホシネート耐性の個体は確認されなかった。
今年度,香取市内の国道51号線の一部では,アスファルト舗装の更新工事が行われており,工事に伴う土砂の入れ替えや攪乱が国道沿いにおけるセイヨウアブラナの個体数変動に寄与していると考えられ,組換え体の逸出状況については今後も継続して調査を行っていく必要がある。