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一般講演 P1-063

房総半島におけるシカ妊娠率の空間変異とその要因

*安藤大介(東大・院・農),鈴木牧(東大・農),浅田雅彦,落合啓二(千葉県中央博物館),宮下直(東大・院・農)

房総半島のシカの個体群変動を推定するため,シカの妊娠率へ影響する空間スケールと環境要因について解析を行なった.

シカの妊娠率は,2004年度の千葉県の調査捕獲と市町村等の有害駆除の捕獲個体から得た.年齢によって反応が異なる可能性を考慮し,1歳と2歳以上とに分けて解析を行なった.解析にあたり,捕獲地点から半径50m,100m,200m,300m,400m の5つの大きさのバッファを作成し,それぞれのバッファについてロジスチック回帰分析を行いAICを算出した.説明変数には,シカ密度と景観構造を基に算出した林内の夏と冬の下層植生現存量(以下、夏餌と冬餌)と林縁長を使用した.林縁の多い景観は、我々の先行研究により、シカの糞中窒素量が高くシカにとって好適な環境であることが既にわかっているため使用した(Miyashita et al., in press)。AIC weightを用いたModel averaging を行い、妊娠率への各変数の影響の大きさを,95%信頼区間から判断した.

シカの妊娠率を最もよく説明したバッファサイズは,1歳,2歳以上ともに100mだった.妊娠率へ影響する要因は,1歳は夏餌が正に影響していたが,冬餌と林縁長の影響は小さかった.2歳以上では,夏餌と林縁長が正に影響していたが,冬餌はほとんど影響していなかった.以上の結果から,シカの妊娠率には,夏の下層植生現存量と林縁に存在する豊富な餌資源が影響することが示唆された.

日本生態学会