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一般講演 P1-065

森林撹乱と生態系管理−カナダ・クートニー国立公園の亜高山帯林における大規模火事の果たす役割−

森 章, Kenneth P. Lertzman(サイモンフレーザー大学)

近年、生態系や景観レベルでの機能や動態を重視する管理・保全方策は、カナダの森林における生物多様性の保全戦略の中心を担っている。特に、自然撹乱体制を中心とした生態系が本来持つプロセスを尊重することは、森林景観内の生態系の健全性を保つ上で必須である。ブリティッシュコロンビア州・クートニー国立公園の管理方策においては、現在の気候下で本来起こり得る変動幅の範囲内で自然撹乱体制を維持すること、あるいは範囲内へ回復させることを念頭においている。しかしここ数年、クートニー国立公園の亜高山帯林で大規模な火事が頻発している。特に、2003年の火事では過去に例を見ないほど広域にわたって燃焼した。カナダの国立公園では、過去半世紀以上にわたった火災抑制プログラムの結果、疎林や草原が減少し、燃料となる森林の蓄積量及び林分間の連結性が高まってしまっていると考えられている。ここ数年のクートニー国立公園における大規模な火事は、このような人為による景観構造の改変に起因するものだろうか?そうであるならば、意図的な火入れによる森林モザイク構造の調整が必要となる。一方、1927年から1988年の間は、降水量の増加により、公園内で大規模な火事が減少したと考えられている。降水量増加により火事の減少時期があると、森林の連結性が結果として生じ、大規模な火事の可能性が高まる。クートニー国立公園における最近の火事は、極めて大規模だが、降水量の変化に伴う自然本来の変動幅の中でのイベントに過ぎないのかもしれない。つまり、近年の大規模な火事は、景観内の森林生態系の健全性の維持に必要とされる“自然な”イベントであるとも考えられる。本研究では、地理情報システムを用いた、過去の火事履歴と近年の大規模火事の比較をもとに、クートニー国立公園の亜高山帯林における火事の果たす役割について言及する。

日本生態学会