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一般講演 P1-066
干潟は急速な減少・衰退が危惧され,自然再生事業の対象とされている生態系の一つであり,その機能の評価は自然再生を試みるうえで重要な課題である。干潟の持つ機能の一つに,環境中の過剰な有機物を分解する浄化機能があげられる。干潟では潮の満ち引きがあり,常に水分条件(冠出・冠水)や温度の変化にさらされている。そのため微生物による有機物の分解活性も,このような環境の変化に伴って大きく変動することが予想される。演者らはこれまでに干潟堆積物の有機物分解が,冠水状態に比べて干出状態で促進されていることを明らかにした(萩森ほか 第53回日本生態学会大会)。しかしこれまでに,潮の満ち引きの影響を含めて干潟での有機物分解量を定量した例はない。そこで本研究では,野外の年間の温度変化に加えて,潮汐(干潟の干出・冠水)の影響を考慮して河口干潟における有機分解量を推定することを目的とした。
広島県を流れる二級河川,黒瀬川の河口干潟に調査地を設定した。夏季と冬季に3地点から干潟堆積物のコアサンプル(直径5 cm,高さ5 cm,n = 3)を採取し,干出・冠水条件下で,好気的有機物分解速度をCO2放出速度を指標として測定するとともに,その温度依存性を求めた。CO2放出速度の測定は干出状態では赤外線ガス分析装置を用いたOpen-flow法で,冠水状態ではコアサンプルを入れ人工海水で満たした密栓容器内の溶存酸素消費量を溶存酸素計によって測定した。また野外において,携帯型赤外線ガス分析装置を用いて干潟干出時のCO2放出速度を測定した。本ポスター発表では,上記の室内実験と野外測定の結果をもとに,現地の気象データ(気温・海水温の変化,干潟の干出・冠水時間)を用いて,調査地における年間の好気的有機物分解量を推定,報告する。