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一般講演 P1-069
同じ森林内であっても林冠の開空度や土壌条件は異なるため、林床植物の生産性も場所ごとに違っている。この生産性の違いは植食動物の林床植物群集に与える影響にも違いをもたらすと考えられる。しかし、大型植食動物に関しては野外操作実験が難しいため、十分に検証されてこなかった。そこで本研究では25haのミズナラ林においてシカ密度と林床植物の生産性を操作し、1.林床植物の生産性によってシカの採食圧は変化するか?、2.生産性とシカ密度によって林床植物の種数は変化するか?の2点を明らかにすることにした。シカ密度は柵を設置することにより高密度・低密度・排除の3段階設定した。植物生産性の操作は高木伐採と窒素施肥を組み合わせて4処理行った(無処理、伐採、施肥、伐採+施肥)。そして、シカ密度3段階・生産性操作4処理の計12条件で、実験開始後3年目の林床植物の被食率、主要種の植物高、出現種数を調査した。
採食率は無処理区と施肥区で変わらなかったが、伐採区、伐採+施肥区の順に増加していき、それに伴い嗜好種の植物高が低下した。林床植物の生産性は伐採区と伐採+施肥区で増加していたため、林床植物の生産性の増加によってシカの処理区への利用頻度が高まり、被食率が増大したと考えられた。林床植物の種数は、施肥や伐採処理の効果は見られたが、シカ密度段階間では有意差は見られなかった。これは林床植物の多くが多年生であったため、3年間のシカの採食圧では個体の消滅にはすぐにはつながらず、種数を変化させるに至らなかったためと考えられた。