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一般講演 P1-072
二次草原はかつて国内の広い面積を占めていたが、管理の放棄や外来牧草地・植林地への転換により急速に減少した。これに伴い、草原を主な生育域としている植物種も減少し、二次草原の保全は生物多様性保全上の重要な課題となっている。東京都奥多摩町の雲取山から鷹ノ巣山にかけての尾根沿いには、防火帯として管理が継続的に行われてきた二次草原が帯状に成立している。この草原は秋に構成種の多くが一斉に開花し、登山者らに「お花畑」として親しまれる、東京都内では数少ない草原性植物の貴重な生育地となっていた。しかし1990年代以降、この地域においてニホンジカが急速に増加し、草原の種組成が大きく変化した。本研究では、防火帯草原(ススキ−ヤマトラノオ群集,ミヤコザサ−シモツケ群集)の種組成と開花個体の有無、植物体の高さの経年的な変化を明らかにすることを目的とした。1982−85年に植物社会学的調査が行われたスタンドと同一地点において1999−2002年に21スタンド、2004−2006年に36スタンドで追跡調査を行った。このうち7スタンドで調査区内での開花個体の有無と最大個体の高さを計測した。結果、1982−85年から2004−2006年にかけて47種が減少、20種が増加していた。減少した種には東京都の絶滅危惧種であるシオガマギク、ヤハズヒゴタイ、ヤナギタンポポ、オオヤマサギソウ、ヤマトラノオ、タカネコウボウ、コウリンカが含まれていた。出現頻度や被度が減少した種は、開花区率と植物体の高さも同様に低下する傾向がみられた。また、春に開花するミツバツチグリなどの種よりも秋に開花するアキノキリンソウなどの種のほうが減少しやすく、開花区率が低下しやすい傾向がみられた。