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一般講演 P1-074
多種類の生態系を含む環境の変動予測シミュレーションを行う研究では、そのような複雑な生態系モデルを一から構築するよりも、過去に開発され、多数の利用者により精度の信頼性がある程度保証された複数の単一生態系モデルをサブモデルとして組み合わせて実行する方が実利的な場合が多々ある。この様な複合生態系モデルの実行時に問題になるのが、各サブモデルの入力・出力データのファイル形式、単位、スケールなどの違いによる変換作業の繁雑さに加え、一回のシミュレーションに使用した各サブモデルの入出力データを、それぞれの関係を失わないように、整理して管理することの大変さである。本研究では、生態学研究を促進するための情報学(エコロジカルインフォマティクス)の技術を利用し、複合生態系シミュレーションモデル実行上のデータ変換や、入出力データの管理を効率化する為のデータマネジメントシステムを構築する。このシステムの作成にあたっては、総合地球環境学研究所の5-2IDEAプロジェクトが構築した、集水域の物質循環モデルを対象として使用する。
このシステムの三つの主な要素となるのが、各モデルの扱うパラメータのメタデータを記述するためのEcological Metadata Language (EML)、入出力データを保存するデータベース、そして、メタデータ情報に基づいて行うデータ変換、データアーカイビングなどの一連の作業をワークフローモデルとして記述し、実行するためのソフトウェア、Keplerである。複合シミュレーションモデル実行に係わる問題を、メタデータを中心とするエコロジカルインフォマティクスの技術を使って解決することにより、異なるサブモデルを代用した場合でも、これによるカスタマイズの必要性が少なくなるなどの利点が期待される。本研究では、エコロジカルインフォマティクスの視点から、このシステムの有用性の評価を行う予定である。