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一般講演 P1-083

狩猟統計にみる九州のリス科動物の捕獲数の推移

*安田雅俊(森林総研・九州)

九州のリス科動物(ニホンリス,ムササビ,ニホンモモンガ)は国もしくは県のレッドデータ種である.本報告では1993年度まで狩猟獣であった前2種の捕獲数の推移を狩猟統計(鳥獣関係統計)に基づいて検討する.統計期間は1943-45年の3年間を除く1923年から1993年までの68年間である.全期間の狩猟によるリス類の捕獲数は,九州全体で計2478,県別の内訳は宮崎842,熊本823,鹿児島371,大分208,佐賀131,福岡83,長崎20であった.九州の北部で少なく,中南部で多い傾向が認められた.九州全体の1年当たりの平均捕獲数は,1920年代から1960年代までは39-70の範囲であったが,その後,1970年代8.5,1980年代6.0,1990年代0.3と単調に減少した.統計期間の最後の20年間(1974-1993)の全捕獲数は142で,宮崎と鹿児島の2県でその93%を占めた.一方,全期間のムササビの捕獲数は,九州全体で計257314,県別の内訳は宮崎146867,熊本61162,鹿児島33296,大分12223,福岡3601,長崎102,佐賀63であった.中南部で捕獲数が多い傾向はリス類と同様であった.九州全体の1年あたりの平均捕獲数は,1920年代から1950年代までは5400-7000であったが,1960年代に4000を割り込み,1970年代1039,1980年代425,1990年代129と急減した.最後の20年間の全捕獲数は10381で,宮崎と鹿児島の2県でその67%を占めた.狩猟統計の問題点としては,1)報告の不確実さ,2)種の判別の不正確さ,3)狩猟期間の長さの時代的な変化が挙げられる.特に,狩猟統計上のリス類には外来種のタイワンリスとシマリスを含むため検討には注意を要するが,上記のリス類の捕獲数が全て外来種であったとは考えにくい.

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