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一般講演 P1-090

野生鳥類が持つ病原体の空間解析

*長 雄一(道環研),浅川満彦(酪農大・獣医),金子正美(酪農大・環境)

平成15年度より開始した環境省環境技術開発等推進費による「野生鳥類の大量死の原因となり得る病原体に関するデータベースの構築」研究プロジェクトの大きな目標の一つは、野生鳥類の病原体情報の蓄積−解析システムの先行開発・評価・提案である。その一つの成果が位置情報付きの電子カルテシステム(生体・死体情報だけでなく、糞サンプル等も入力・解析可能)である。このシステムを活用することにより、野生鳥類の死亡個体及びその発生パターンに関しても客観的・科学的な評価が可能となる。本発表では、既存情報を用いて、システム運用上の問題点を指摘するとともに、その解決法を提示する。

先行入力した情報は、北海道環境生活部より提供された平成11年度から平成14年度までの北海道全域における野生動物の保護収容記録である。これらのデータセットを空間解析上の「格子データ」として扱い、これに市町村別人口データを付加し、さらに生息環境の指数の一つとして湖沼情報(ここでは湖沼数)を付加した。すべでの数値は市町村面積で補正し、解析を行った。空間解析にはS-plus及びArcView GIS (Ver.3.2a)等を用いた。

北海道全体での空間自己相関を求めたところ、人口及び湖沼の分布には集中域等の空間構造が認められたのに対して、保護収容された野生鳥類の分布は、北海道全体でみるとランダムに近い結果となった。さらに局所的自己相関分析を行ったところ、動物園あるいは北海道庁や環境省の施設等がある地域を中心に保護収容個体分布の集中域があり、それ以外の地域は一様分布に近い空間構造がみられた。このため、保護収容個体からのサンプリング結果には空間的偏りがあり、何らかの補正の必要があることが示唆された。本発表では、その補正方法等の検討を行う。

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