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一般講演 P1-091

野生動物救護からの環境評価の試み

*井澗 美希(岐阜大・救護セ),淺野 玄,柳井 徳麿(岐阜大・獣),江村 正一(岐阜大・医),坪田 敏男(岐阜大・獣)

(目的)岐阜大学COE野生動物救護センター(以下センター)は、文部科学省21世紀COEプログラムの一環として野生動物救護を通じて環境評価を行うことを目的に、2003年11月に開設された。本研究の目的は、センターで受入れた救護個体および死亡個体の各々救護原因および死亡原因を明らかにし、野生動物に対する人為的な影響を評価することにあった。

(材料および方法)岐阜県内での救護動物を受け入れ、受傷や疾病の様子、救護地点視察から救護原因の特定を試みた。また生体のみならず、死亡個体も受け入れ、病理解剖を行った。

(結果)2003年11月から2006年12月までの約3年間に、センターでは270例の救護動物を扱った。内訳は鳥類234例、哺乳類36例であり、鳥類が多数を占めた(87%)。また、救護動物の野生復帰率は34%であった。一方、死亡個体は474例を受け入れ、鳥類247例、哺乳類227例であった。

(考察) 救護動物において救護原因を分類すると、自然要因15%、人為的要因36%、複合要因5%、不明44%であり、不明を除くと人為的要因が多かった。これは、救護される場所が人の活動圏で多いことを差し引いても、野生動物に対して人の影響が多大であることをうかがわせるものである。

以上のことより、救護原因の特定・救護要因の分類は、「野生動物にとって環境中に潜む問題が何なのか」を考察する上で有益であることが示された。我々の最終目的は、人と野生動物にとってより住みやすい環境を提言していくことである。

日本生態学会