| 要旨トップ | ESJ54 一般講演一覧 | 日本生態学会全国大会 ESJ54 講演要旨


一般講演 P1-094

樹幹着生蘚苔類に見る西大台ブナ林30年の環境変化

*佐久間大輔(大阪市立自然史博物館), 木村全邦(森と水の源流館), 道盛正樹(大阪自然史センター)

大台ヶ原は紀伊半島中部に位置する近畿地方の代表的な湿潤冷温帯林である。特に蘚苔類626種(土永1988)と国内でも有数の豊かなフローラを抱える。近年、台風、シカの増加、オーバーユースなど様々な要因によりギャップの拡大、森林の乾燥化が進み森林生態系の衰退が進行している。本調査は大台ヶ原自然再生事業の一環として、森林生態系変化の指標として樹幹着生性蘚苔類の現状を調査したものである。今回は2005年の調査結果を中心に、西大台の状況について報告する。

調査は2005年9-12月に西大台が原の比較的林冠の閉鎖した林分2カ所、ギャップ形成の進んだ2カ所に15m×15mの調査区を設置し、出現種を記録した。同地域は中西・土永(1974)によって約30年前の調査結果があり、状況の比較が可能である。

出現種数は2005年度の調査全体で蘚類70 種、苔類49 種の合計119 種にのぼった。閉鎖林分のみに着目して1976 年の調査と比較すると、土永らの調査で88 種(うち蘚類53 種)に対し、今回の調査で87 種(同52 種)となり、種数の上では大きな変化はなかった。しかし、今回閉鎖林分内で採取された87 種のうち32 種は前回採取されなかった種であり、フロラの内容が大きく変化していることが伺えた。ある程度の入れ替わりは当然予想されるが、新規種には、チヂミカヤゴケやフルノコゴケなど裸地的環境や強光・乾燥条件など都市的環境に近い環境で生育する種類が多く見られた。

ただし、調査区間の種組成の類似度を比較すると閉鎖林分調査区が過去の西大台の状況に最も近いものとなった。これらから大台ヶ原蘚苔類相の維持に関わる条件について検討する。

日本生態学会