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一般講演 P1-099

日本の絶滅危惧淡水魚類を対象とした生息地ポテンシャルの時空間的変動

*亀山哲(国立環境研究所),福島路生(国立環境研究所), 韓美徳(筑波大学),島崎彦人(国立環境研究所), 金子正美(酪農学園大学)

流域管理と生態系保全との融合は共に表裏一体の環境課題である。そして現在,このジレンマを越え,再生・共生への道筋が求められている。

これを踏まえ「正確かつ広域な現状把握」と「費用対効果を比較し得る具体的な自然再生計画」を速やかに実現しなければならない。つまり,どこで?何の種を守るために?何をすれば効果的か?を定量化する手法が必要となる。しかし,既存のモニタリングは,特定の種や河川に限定された例が多く,全国規模の生息適地推定や,広く淡水魚全体を扱い得るアセス技術の確立は未だ発展段階と言える。

本研究の目的は,1)日本全国を対象とした,絶滅危惧種淡水魚類の生息地ポテンシャル推定技術を確立,2)その技術を応用した魚類生息適地の時空間的な変化の把握である。

今回我々は研究ステップとして次の3つを行った。1)データベース構築(過去13年間の魚類調査結果と流域構造・ダムによる流域分断状況等の環境要因)。2)一般化線形回帰モデルを用いた生息地ポテンシャル推定。3)解析結果のマッピング。

研究では解析結果として絶滅危惧種の26種を取り上げた。また個々の種に対し過去25年間の生息地ポテンシャルの変化を抽出するシステムを開発した。

結果として,ポテンシャルと実際の捕獲地点の分布は空間的な相関が高く,またポテンシャルの時空間変化からは,増減に地域差がある種(オヤニラミ等)や一方全国的に低下傾向が示される種(メダカ)等が存在する事が示唆された。

本システムは,推定可能地点約9000地点,解析可能魚種数580種,また解析時間ステップ1年など非常に汎用性が高いのが特徴である。この評価システムが淡水魚類の生息地保全と将来的な流域再生のために広く活用される事を望みたい。

日本生態学会