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一般講演 P1-107
野生生物の生息適地を示した地図は、開発などの生息地改変を未然に防ぐための重要な資料となる。そのような地図を作製するにあたって、直接の観察による生息地調査は確実ではあるが、広域で行うことはコストの面から非現実的なことも多い。モデルによる生息適地の推定は、GISなどのソフトウェアにより比較的容易に行えるようになってきている。イシカワガエルは沖縄島と奄美大島のみに生息し、絶滅危惧IB類に指定されている希少種である。生息地である奄美大島は急峻な地形で森林が深く、全島を直接調査するのは困難である。さらに外来種マングースの侵入域では、観察だけでは本来の生息適地を発見しにくいと考えられる。
そこで本研究では、イシカワガエルの生息適地を推定し、地図上に表すことを目的とし、標高・斜面角度・斜面方向・山頂からの落差・植生などの環境情報を説明変数、鳴き声調査による生息地データを従属変数として重回帰分析を行い、得られたモデルを未調査地域へ外挿した。
鳴き声調査は2006年2月〜4月に行い、順路上で50mごとにイシカワガエルの鳴き声が聞こえたか否かを記録した。期間中の訪問回数は地点により異なった。生息調査において複数回調査した地点のデータから、最尤法的に1回の調査の生息確認率(detectability)を推定するモデルの研究が近年行われている。そこで、 この生息確認率を計算し、訪問回数に応じて生息確率を計算した。分析によって得られたモデルを未調査域を含む島全域に外挿することで、生息適地を推定した。