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一般講演 P1-108

屋久島照葉樹林におけるヤクシカ個体数密度増加にともなう階層別の植生変化

*幸田良介, 藤田昇(京大・生態研), 辻野亮(地球研), 野間直彦(滋賀県立大)

近年日本各地でニホンジカの増加による森林植生への影響が問題となっている。屋久島に生息するヤクシカに関しても、西部地域での推定密度は1平方キロメートルあたり40-80頭と非常に高く、森林植生への影響が危惧される。そこで屋久島西部照葉樹林が、ヤクシカの個体数密度変化に伴ってどのような影響をうけてきたかを、稚樹層、亜高木層、高木層の各階層ごとに調べた。

屋久島の西部照葉樹林において、1988年から2006年にかけてルートセンサスを行い、単位距離あたりのヤクシカ発見率の変化を解析した。また1989年から2006年にかけて稚樹層で5回、亜高木層と高木層では6回毎木調査を行った。ヤクシカの嗜好性によって各樹種を区分し、個体数密度、枯死率、新規加入率の経年変化を解析した。

ヤクシカの発見率の変化をみたところ、90年代後半から著しく増加していることが分かった。植生については、高木層では種構成や個体数に大きな変化はみられなかったが、亜高木層では1997年ごろから嗜好種が減少していることが分かった。また稚樹層では1994年ごろから種構成の変化や、嗜好種の枯死率の増加がみられた。

これらのことからヤクシカ個体数密度の増加に伴って、種構成の変化や嗜好種の枯死率の増加といった影響が生じていることがわかった。またヤクシカの影響を受けやすいと思われる階層順に影響が出始めていることから、現在は大きな変化の見られていない高木層にも今後影響が及んでいくことが示唆された。

日本生態学会