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一般講演 P1-110
近年、野生ニホンザル(サル)による農作物被害が増加している。被害の減少と適切な保護管理のためには、その生態や行動の把握が必要となる。とくに、生息地管理や被害管理をおこなっていく上では、サルの遊動様式を明らかにし、それに影響を与える要因を明らかにしていくことが重要である。しかし、サルの遊動に影響を与える要因について検討した研究の多くは、人為的な撹乱の影響がほとんどない自然環境下でおこなわれており、人間由来の要因に関する検討はこれまでほとんど調べられていない。そこで本研究では人間からのアプローチがサルの遊動様式に影響を与えているかどうかを明らかにすることを目的とした。
調査は2003年と2005年におこなった。ラジオテレメトリ法と直接観察法を併用し、1時間に一度、サルの群れの位置を地図上に落とした。同時に地元住民等による追い払いがあった場合、その種類(ロケット花火、爆竹、犬、鉄砲、その他)と時間を記録した。
その結果、2003年から1時間当たりのロケット花火発射数が多かった集落では、2005年にサルの集落滞在時間が減少する傾向があった。しかしなかには住民による追い払いがあまりされていなかったにも関わらずサルの滞在時間が著しく減少している集落もあり、地形など他の要因による影響も強いと考えられた。これらの結果に2006年におこなった調査の結果も加え、人間由来の要因がサルの遊動様式に与える影響について考察する。