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一般講演 P1-114

長野県中南部のため池における水生植物の組成と環境条件との関係

*福島敬彦(信州大院・農学),大窪久美子(信州大学農学部)

水生植物は絶滅危惧種を多く含む植物群であり、その生育環境である水系の環境に大きく影響を受ける。ため池はこれらの重要な生育場所の一つであり、人為的な管理によって成立している二次的自然である。近年、農業の変化や都市化等に伴い、埋立や管理放棄等、ため池と人との関係性が変化した結果、ここを生育地とする貴重な水生植物が減少、変化しており、問題となっている。しかし、ため池に生育する水生植物や環境条件に関する知見は乏しく、基礎的データの収集が必要である。そこで本研究では長野県中南部のため池(止水域)に生育する水生植物の分布と環境条件との関係を明らかにすることを目的とした。

調査地は、長野県の諏訪地域から南信地域までのため池とした。調査方法は、2006年7月から11月に植物分布調査として、水辺周辺の踏査による調査と、池内へのアンカー投下による植物採取を行った。同時に立地環境調査として水質の計測(pH、電気伝導度、溶存酸素飽和度、水温)を行った。その結果、調査ため池数66ヶ所、出現種9科13属21種、環境省RDB掲載種5種(イトトリゲモ、イトモ、シャジクモ等)、長野県RDB掲載種12種の生育を確認した。また、一つの池に生育する種数は、生育無しが37ヶ所(56.1%)と最も多く、次いで1種(15ヵ所)、2種(9ヵ所)であり、これらは全体の36.4%であった。また、出現種は主に貧栄養の水質を好む種が最も多かった。調査を実施したため池のpH値は6.53-9.83、電気伝導度は15.7-236.7μS/cm、溶存酸素飽和度は29.3-100%、水温は7.4-20.8℃の範囲にあった。本大会においては、土地利用調査(2006年12月)と、ため池の管理者に対する管理方法および利水に関するアンケート調査の結果を加えた考察を行う予定である。

日本生態学会