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一般講演 P1-116

教材が生物多様性保全を訴える

*畑田 彩(総合地球環境学研究所),市川昌広(総合地球環境学研究所),中静 透(東北大学)

生物多様性の喪失は今や大きな地球環境問題、国際問題の一つである。1992年リオデジャネイロで開催された地球サミットで生物多様性条約が締結され、条約に加盟した国はそれぞれ生物多様性国家戦略を制定し、この問題に取り組んでいる。しかし、森林破壊や地球温暖化などの環境問題と比べると、生物多様性の喪失に対する一般市民の危機感はさほど高くはないのではないだろうか。生物多様性の問題を広く一般市民に理解してもらうには、生物多様性についての正しい認識と現状を積極的に訴えていく必要がある。

地球研プロジェクト「持続的森林利用オプションの評価と将来像」では、プロジェクトの研究成果を盛り込んだ教材(大学教官が授業で用いるMicrosoft Powerpointのプレゼンテーションのシリーズ)を作成中である。対象は文系・理系を問わず教養部の学生であり、生物多様性の問題を生態学、経済学、民俗学、社会学とさまざまな側面から総合的に扱っている。この教材が活用されれば、将来一般市民となる学生の生物多様性に対する認識を深めることができると期待される。また、研究成果を一般市民に直接発信することもできるであろう。

一方で、教材を作成する段階で解決しなければならない問題も多くある。まず、生態学についてのバックグラウンドのない文系学生や、経済学や社会学についてのバックグラウンドのない理系学生でも容易に理解できるようにする必要がある。さらに、生態学については門外漢である経済学部の教官でも生物多様性の機能について授業ができるようなものでなくてはならない。そのために、文系・理系の研究者や院生も含めたワーキンググループで原案を練り、環境教育の経験者が全体をコーディネートしながら作成を進めている。今回の発表ではその方法論と試作版の一部を紹介したい。

日本生態学会