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一般講演 P1-119
二次的自然における水路の位置づけは重要であり、近年、そこに生育する水生植物の減少や変化が問題になっている。本研究では、長野県上伊那地域における水路の水生植物の保全を検討する基礎データを収集し、分布等の現状把握と立地環境との関係を明らかにすることを目的とした。調査は長野県上伊那地域(伊那市、駒ヶ根市、南箕輪村、宮田村)の水生植物の生育する水路において、合計12地区99区画で、総距離22034.6mを実施された。
水生植物の生育状況把握のため、水路沿い、もしくは水路内を歩き、連続して確認できる範囲を1区画とし(連続していても著しく水路内の状態が変化する場合は別区画とした)、水中に出現した水生植物の生育範囲(m)、出現種ごとの最大最小の生育地にそれぞれ仮想方形区(水路幅×水路幅)を設定し被度群度(5段階)を記録した。同時に、環境条件として、水路形状、水路壁面の構造、水路内の底質、浮石の有無、樹木人工構造物による被陰の様子、周辺の土地利用、水温、水深、pH、EC、DOを測定記録した。調査距離が区画ごとに異なるため、1区画における優先度を示す指数として分布距離割合=分布距離/調査距離×100(%)を使用し、それぞれの区画を比較した。
その結果、水生植物合計13種の分布状況を確認し、環境省RDB種としてシャジクモ、ナガエミクリも含まれた。水質は一部を除いて地域全体として貧栄養であるが、これは上伊那地域の水路の多くが湧水の影響下にあるためだと考えられた。
貧栄養を好むとされるバイカモと富栄養を好むとされるコカナダモが同時に出現している区画が多く確認された。このようなバイカモと他の水生植物の組み合わせは湧水の影響下に成立する特異なものと考えられた。本大会では他の立地条件についても考察を加える予定である。