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一般講演 P1-121

個体ベースモデルによる人為撹乱後の島嶼亜熱帯林の再生過程の解析

藤井新次郎(鹿大・院・教),久保田康裕(鹿大・教)

島嶼亜熱帯林における人為撹乱後の再生過程を、空間構造を考慮した個体ベースモデルで分析した。個体ベースモデルでは島嶼亜熱帯林の気象・土壌パラメータを入力すると,個体毎に光合成や呼吸といった生理的な反応を介して成長や枯死といった個体毎の動態が算出され,最終的に林分全体の動態が出力される。亜熱帯性の林木種46種を想定し、種毎の最大樹高、樹冠幅、樹齢、材比重、萌芽率で種特性を考慮した。人為撹乱後の二次林で見られる更新過程として、林分内の母樹由来の種子散布・萌芽更新・林分外のメタ個体群からの種子散布の3つを想定した。また、島嶼亜熱帯林で見られる台風撹乱による枯死過程も考慮した。このモデルを200年間シミュレートし、野外で得られた二次林から極相林までの時系列データと比較した。まず幹密度や地上部現存量の推移、-3/2乗則に伴う自己間引き現象、サイズ構造、種多様性の再生過程の結果から、亜熱帯林の潜在的な再生過程が再現できた。次に伐採実験を行い、人為撹乱が亜熱帯林の再生過程へ及ぼす影響を定量的に評価した。現存する林分を皆伐した場合、皆伐前の種組成と種多様性の違いにより種多様性の再生過程が異なった。皆伐前種多様性が高い林分ほど、皆伐後の種多様性は早い段階で皆伐前の種多様性に回復した。下層間伐を想定した実験では、下層間伐を行うことで幹密度と種多様性が低下した。これは、下層間伐によって更新個体が除去されるため、時間が経過しても種多様性が回復しなかったと考えられる。

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