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一般講演 P1-129

野生サクラソウ集団における環境応答性の遺伝的変異

*吉田康子(筑波大・生命環境),本城正憲(東大・農学生命科学),北本尚子,大澤良(筑波大・生命環境)

野生サクラソウの保全に資するために、北海道1集団、埼玉1集団、長野3集団の3地域由来の5集団に属するジェネットの環境応答性に関する集団間、内の遺伝的多様性の把握を試みた。2004年に標高30mのつくばと700mの諏訪、2005年につくばと標高1400mの八ヶ岳の複数の試験地で栽培した。八ヶ岳は最も標高の高い野生サクラソウの自生地のひとつである。評価する形質は、先行研究から最も集団間分化が認められた出芽日と出芽率とし、各集団6〜13ジェネット、1ジェネットあたり4〜6ラメットを用いて観察した。

集団内でジェネットごとに出芽率は異なるものの、つくばと諏訪では各集団共に高い出芽率を示し、集団間差は認められなかった。つくばと八ヶ岳では、各環境において出芽率は1%水準で有意に集団間差が認められた。北海道集団を除く4集団の出芽率はつくばに比べ八ヶ岳において著しく低下した。このことからつくばと諏訪では認められない環境耐性の変異が八ヶ岳で顕在化したといえる。各ジェネットの出芽日に関する環境応答性を回帰係数で表したところ、つくばと諏訪では埼玉集団と長野の1集団で回帰係数が他の集団に比べ大きい値を示した。つくばと八ヶ岳では埼玉集団の回帰係数が他の集団に比べて顕著に大きく、1%水準で有意な集団間差が認められた。埼玉集団には環境の変化に対し応答できるジェネットとできないジェネットが存在し、集団内変異が大きいことが示された。これは埼玉集団の自生地の標高が他に比べ低く、寒冷耐性に関わる強い選択を受けてこなかったためと考えられる。

以上のことから、野生サクラソウにとって厳しい環境下での栽培によってジェネット間や集団間で生存や環境応答性に関する集団間、集団内変異が多様であることが明らかになった。

日本生態学会