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一般講演 P1-134
カヤネズミの保全には生息環境となりうる草地を維持する必要がある(京都府レッドデータブック)。そのような草地は日本では主に河川敷、里やま(茅場)、農耕地に存在する。本研究では農耕地の草地における本種の生息条件を探るため、回帰モデルから潜在的な生息適地を判断し本種の分布可能範囲を把握することを目的とした。大阪府堺市における草地において47地点で調査を行い、本種の巣の有無と周辺の環境要因としてパッチの面積、土地利用、植物高、草刈の有無を記録した。それらの環境要因から回帰分析に利用するためGISを用いて合計17の変数を用意した。本種の生息に影響を及ぼす独立変数として検討した変数は上記の環境要因と土地利用から草地としての安定性を3段階に評価したもの、水田、畑、二次林、空地の面積とため池、河川、森林からの距離と林縁長である。調査の結果47ヶ所のうち14ヶ所で本種の巣が確認され、それぞれ選定された変数を使って、ロジスティック回帰および決定木により適地モデルを構築した。本種の営巣には高茎草本が必要なため森林内部には生息地を持たないが、森林に囲まれた谷戸地形の農地や森林の隣接する古くから残された農地には本種の生息に必要なススキ群落が存在することが多く観察された。今回の結果より本種の生息地を景観的に保全するための環境要因が明らかになったと考えられる。