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一般講演 P1-136

深泥池湿原の表層水質とビュルテの空間分布

高橋淳子(京都大・生態研センター),辻野亮(地球研),竹門康弘(京都大・防災研)

深泥池浮島湿原(京都市)における表層水質(電気伝導度・pH)と水質の影響を受けていると考えられるビュルテ地形(浮島凸部)の空間分布との関係を議論する.オオミズゴケのビュルテは浮島凹部でマット状に広がったハリミズゴケにオオミズゴケが侵入することで新生してオオミズゴケの上伸生長によって隆起・生長する.浮島は季節的な浮沈を繰り返すことから,ビュルテが水没すると冠水に弱いオオミズゴケは被害を受けて外縁から侵食されてビュルテは退行,崩壊する.そこで,ビュルテの健全度の空間分布を明らかにするためにビュルテの外縁を,新生外縁部(ハリミズゴケのマット),生長外縁部(ハリミズゴケ縁または非ハリミズゴケ縁のオオミズゴケのビュルテ),退行外縁部(オオミズゴケでないか外縁が侵食されているビュルテ)に分類した.すると新生外縁部は浮島中央部に多いのに対して,退行外縁部は浮島南部に多く,北部でもややみられた.生長外縁部は浮島中央部を中心に全域で見られた.浮島が浮いている夏季(2005年7月,2006年9月)と沈んでいる冬季(2006年2月)に浮島湿原と開水域地点の43地点で電気伝導度・pHを計測したところ,中央部から北部や南部にかけて電気伝導度・pHの値はともに大きくなる傾向が見られた.深泥池では浮島の南水路に水道水が流入していた歴史があることから,浮島南部での高い電気伝導度とpHの値はこの人為的な影響を受けていると考えられる.またこの表層水質の悪化によって南部を中心に退行的なビュルテが多数見られたものと考えられる.現在では南水路の水道水の流入は停止しているが,水道水流入の影響を定量するとともに,浮島湿原の植生変化を継続調査してゆく必要がある.

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