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一般講演 P1-137

北海道東部浦幌周辺地域におけるヒグマの生息地評価モデル

*嶋崎暁啓(日大・院・森林動物),佐藤喜和(日大・生物資源・森林動物),佐藤信彦(日本生態系協会)

北海道東部に位置する浦幌町は,近年農作物をめぐる人間とヒグマ(Ursus arctos yesoensis)との軋轢が深刻化している.被害対策として毎年5頭前後の有害駆除が行われてきたが,現在のような無差別な駆除が続くとメス成獣が絶滅する可能性が指摘されるなど,浦幌地域のヒグマ個体群の将来は決して楽観できない状況にある.そこで本研究では浦幌周辺地域に生息するヒグマについて生息地評価モデルを作成し,ヒグマの保護管理に役立てることを目的とした.

北海道東部浦幌周辺の道有林全域(約430km2)において2005年6月〜2006年8月に60地点で計6回のヘアトラップ調査を実施し,季節別のヒグマ分布情報を得た.各ヘアトラップ設置地点の周辺環境の解析と現地におけるフキ(Petasites japonicus)分布傾向調査から,86生息地変数を得た.ヒグマ分布情報を目的変数,生息地変数を説明変数として季節別にロジスティック回帰分析および分類木を用いた解析を行った.

得られたロジスティック回帰モデルの正分類率は,晩春90.0%,初夏71.7%,夏63.5%,初秋60.9%,晩秋84.8%だった.一方,樹形モデルは晩春83.3%,初夏79.2%,夏73.1%,初秋69.6%,84.8%の正分類率となり,両モデルを比較すると樹形モデルの方が優れていた.樹形モデルの結果より,クマ分布地点の特性としては,晩春:道路から遠い地点,初夏および夏:高標高の地点またはフキ乾燥重量が多い地点,初秋:河川密度が高い地点,晩秋:道路密度が低い地点,が利用可能性の高いエリアとして分類された.本研究により構築されたモデルは,ヒグマの潜在的分布の予測や生息環境改善を図るための検討材料として役立たせることができるだろう.

日本生態学会