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一般講演 P1-138

絶滅危惧種ヒヌマイトトンボの生息地として創出したヨシ群落の発達に関わる環境要因

*森本正俊,山村靖夫(茨城大・理・生態),渡辺 守(筑波大・生物科学系)

絶滅危惧種ヒヌマイトトンボは汽水域に成立するヨシ群落を生息地とし、同一のヨシ群落内で一生を完結する特異な生活史をもっている。2003年1月、本種個体群を保護するために、生息地(約500 m2、以下、既存生息地とする)に隣接した放棄水田にヨシを密植し、海水と淡水を混合した汽水を流して、新たにヨシ群落(2110 m2、以下、創出地とする)を創出した。既存生息地と創出地に方形区を設置して、2003年4月から2006年10月まで、ヨシの地上茎の自然高と根際直径を継続的に測定した。各年の5月と8月、9月には方形区内のヨシの現存量を、根際直径の2乗と自然高の積に対する重量の相対成長式から推定した。また、ヨシ生育の環境要因として、水深や塩分濃度、アンモニウム態窒素濃度、硝酸態窒素濃度、可給態リン濃度、土壌の酸化還元電位を測定した。創出地のヨシの現存量は2003年から2005年にかけて増加し、既存生息地と同程度になった。しかし、2005年には創出地内でヨシの成長に差が生じており、2006年におけるシュートあたりの重量は、西側のヨシ群落では平均7.11 gであったのに対し、東側のヨシ群落では平均4.35 gであった。したがって、創出地東側のヨシ群落ではヨシの成長が制限されていることが明らかになった。創出地西側のヨシ群落では塩分濃度と酸化還元電位を除く他の環境要因は既存生息地のものと同程度であったが、東側のヨシ群落では、すべての環境要因に既存生息地との差が見られた。創出地をヒヌマイトトンボの生息環境として維持していくために、ヨシの成長を制限している要因を解析した。

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