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一般講演 P1-139

試験放鳥されたコウノトリの生息地利用

*内藤和明, 大迫義人, 池田 啓(兵庫県立大・自然研)

コウノトリの野生繁殖個体群は1971年に日本から絶滅したが,飼育下での保護増殖を経て,兵庫県豊岡市において2005年9月に初めて試験放鳥が行われた.更に翌年9月には7個体が放鳥された.本発表ではこの7個体のモニタリング結果を基に,放鳥個体の行動範囲および採餌場所や行動の特徴を明らかにする.

7個体のうち,3個体は豊岡盆地の中央を流れる円山川の河川敷から,4個体は水田地帯に設置したケージ内(放鳥拠点)で3ヶ月間馴致させた後に同所から放鳥された.これらの個体を対象に,原則として午前6時または日没を含む1日9時間の目視による追跡を断続的に行い,居場所,行動,採餌状況等を記録した.

放鳥から1ヶ月は全個体とも自力で採餌し,ほとんどの個体は豊岡盆地内の稲刈り後の水田などを採餌場所としていたが,その後飼育施設であるコウノトリの郷公園に飛来し,園内をねぐらとして開放ケージ内で飼育個体に与えられる餌に依存する個体が増加した.最終的には6個体が園内に飛来した.その結果,行動範囲が狭まり採餌行動に費やす時間が減少する傾向が見られた.この対策として前述した放鳥拠点周辺で給餌を行ったところ,うち2個体が放鳥拠点周辺でねぐら入りするなど行動の中心を移した.放鳥後の3ヶ月間一貫して自力で採餌したのは1個体のみで,この個体は日中の60%程度を採餌行動に費やし,水田や水路で昆虫やドジョウなどを時間をかけて丹念に採餌することが明らかになった.

日本生態学会