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一般講演 P1-143

西宮市におけるキシノウエトタテグモの分布と生息場所の条件

*大家 理絵,遠藤 知二(神戸女学院大・人間科学)

原蛛亜目に属する地中性クモ類は、増殖率が低い、集中分布する傾向を示す、分散能力が低いなどの特徴をもつことから、多くの絶滅危惧種を含み、保全対象となっている。キシノウエトタテグモ(Latouchia typica)も準絶滅危惧種に指定され(環境省 2006)、種の存続が危ぶまれているが、本種は存在自体を確認することが難しく、分布域や生息状況を把握することは容易ではない。そこで、本種の生息状況を詳細に把握するとともに、生息の可能性を決める要因を明らかにすることを目的として研究を行った。

調査は2005年および2006年に兵庫県西宮市を中心とする地域の都市部に残存する緑地(上ヶ原台地に残された山林4ヶ所、市内南部の都市化の進んだ平野部の社寺林7ヶ所、台地と平野部の境界斜面に帯状に残存する山林16ヶ所の合計27ヶ所)で行った。各調査地で50×50cmのコドラートを設定し、地表面に堆積している落葉層を取り除き、さらにピンセットで丹念に地表をかきながら巣穴を探した。本種の巣穴が見つかった場合には、巣穴の大きさを測定し、各コドラートについて、裸地の割合、土壌硬度、落葉層の深さなどを測定した。

その結果、上ヶ原台地で1ヶ所、平野部で1ヶ所、台地境界斜面で10ヶ所、合計12ヶ所の調査地で巣穴が発見された。これらの生息地のうち、巣穴の出現率と密度がともに高い値を示したのは上台地の1ヶ所、境界斜面の4ヶ所、計5ヵ所であった。これら以外の生息地では小さな巣穴がほとんど発見されず、繁殖個体群が衰退している可能性があった。クモの巣穴掘りに影響すると思われた土壌硬度と裸地の割合には、生息地と非生息地の間で有意差がなかったが、落葉層は非生息地よりも生息地の方が有意に深かった。キシノウエトタテグモ個体群が都市部の緑地のなかで存続できる要因について考察する。

日本生態学会