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一般講演 P1-147

冷温帯林におけるシカ類の植生食害が土壌動物群集におよぼす影響-四半世紀前の群集と比較して

*齋藤星耕, 菱拓雄, 水田瞳, 清水昭宏, 金子信博, 武田博清

近年、シカ類の個体群密度の過度の上昇により、日本列島の暖温帯林・冷温帯林における下層植生が極端に減少している。植生の衰退にともなうリターの供給や物理的なリター保持能力の低下による土壌堆積腐植層の劣化、および根系からの炭水化物供給の変化による土壌動物群集への影響が予測される。また、土壌動物群集の多様性の維持には、供給されるリターの多様性が寄与している(Takeda 1987; Kaneko and Salamanca 1999; Hansen 2000; Moore 2004; 丹羽 2006)ため、低木、ササ類、シダ類などの摂食により林床に供給されるリターの多様性が減少することは、生物多様性維持の観点から重要な問題である。

京都大学芦生演習林においてはシカが増加する以前のミミズ、トビムシ、ササラダニの群集データ(Tsukamoto 1977; Takeda 1981; Kaneko and Takeda 1984)が蓄積されている。芦生においても植生への食害は著しく、通常有機物蓄積が卓越する斜面上部においても有機物層の厚さは数分の一まで減少し、分布の不均一性も増加した。今回は小型節足動物群集(トビムシ、ササラダニ)について過去のデータと比較することにより、シカ類によるインパクトの前後における個体群レベルと群集構造の変化を土壌堆積有機物に関連付けて議論する。

日本生態学会